イタリア留学10年、サンタ・チェチーリア国立アカデミアを準首席で修了 チェゼーナ音楽院で器楽のコレペティ、現地学生指導の経験から現地でしか学べないピアノ演奏の秘訣をレッスン(オンライン対応)や動画でお伝えしています。
イタリアの音楽院で日本人留学生の入試に立ち会った時ですが、その時に教授たちが言っていた言葉がとてもショックで衝撃を受けました。
それは「日本人は指は動くが、音は汚い」というものでした😱
こうした評価が、留学に来たばかりの日本人学生に対して下されることはたまに耳にします。また、奏法を基本からやり直させられる学生が多いです。(これに関しては、卵形に関する記事で詳しく書きます)
日本人の音楽留学での最初の壁
他にも私の友人で、ミラノで声楽を学んでいた女性(イタリア在住10年)から聞いたことですが、同じミラノの音楽学校に留学で入ってきた日本人学生(声楽)に対して教官が「彼の音は大きいばかりでうるさいほどだ」という評価を下し、演奏会への出演ができなかったことがあったそうです。彼は某有名音大卒で、国内コンクールでの受賞歴多数と輝かしい経歴があったにもかかわらずです。
また、ミラノでもピアノで留学した学生で、1年目は奏法からやり直しになったという話はちらほら聞くようです。
イタリア人が決して差別をしていたり、意地悪な評価を下しているわけではありません。留学でしっかりと学ぶにつれ、驚くほど音色が磨かれ、表現力が向上していきますが、必ずしっかりと的確に評価してくれますし、勇気づける言葉を山ほどもらえます。
海外基準のピアノの基本と日本の卵形の違い
ただ、留学初期に、そうした評価がありがちな原因はなんだろう、どうしたら音を綺麗に磨くことができるのか、ピアニッシモでも遠くに届く打鍵ができるのかを私も研究しました。
まずは、日本で習う基本「卵形」から離れることが大事です。あるピアノ留学生は「君はなぜ私が若い頃(50年前)に100年前の奏法と言われていたものをやっているのか?」と言われたそうですが、卵形は、脱力、指の独立分離荷重、支えを作った上で最終的にたどり着くのは良いのですが、最初から卵形で入ると、手首や指の力が抜けにくくなり、音色もそれに応じて硬いものになります。
ふくよかで柔らかい音色や硬い音質、軽い音など曲に合わせた音色を選ぶことができず、腱鞘炎などの怪我のリスクも上がります。ピアニッシモが遠くに飛ぶこともありません。
海外の音楽院と日本の音大の違い
日本の音大受験で学ぶ楽典(音楽の基礎的な理論)や和声、音楽史は、表記の仕方が異なります。メソッドが違うためほとんど海外の音楽院受験では通用しません。
また、入学したとしても、日本の音大で学んだ音楽史や音楽理論、対位法などは通用せず、現地の音楽院でやり直しになる。入学後の授業も日本の大学でに比べ、より発展的で、各作曲家の音楽技法や世界史に渡るまでより専門性の高い授業が行われます。
もちろん、イタリア語が十分でないと大変な苦労をします。
私は当時のイタリアの先生から習う奏法が体に馴染まず、体を壊しかけたことがありました。私は日本人の中でも少し華奢ほうです。骨太のイタリア人たちの奏法は学びになりますが、日本人として合わない部分も当然出てきます。そうして、さまざまなメソッドを学び、自分に合ったものを集中的にマスターするという奏法のリフォームをし、その中で音色が変わり、かつ体の負担の少ないメソッド・演奏方法にたどり着いた経験があります。
世界でどこに行っても認められる音の奏で方です。そして、それは多くの日本人にとって非常に合理的で、フィットするものだと自負しています。
海外音楽留学で得られるものとは?
イタリアで10年間学んでわかったことは、譜読みや演奏方法というのは、教授から「口伝でのみ」教わることができるということです。口伝で脈々と歌い継がれてきたもの、それを学ぶことができるということです。それは日本ではほとんど学ぶことができないものです。
譜読みを学んだ先に、それにあった奏法と音色を選ぶことが必要になります。楽譜は作曲家の設計図のようなもの。ときに役者のように曲を音で演じる必要があります。それを想像だけでこなせるとは思いません。
Artとはラテン語のARS(技術)から派生した言葉です。技術には、美しい音を奏でる技術、曲やメロディーに応じた体の使い方や色々な音色を使い分ける表現技法、構想を理解し形にする譜読みや構成力などがあるでしょうし、それらを土台から一つ一つ、しっかりと積み上げる必要があります。
日本でヨーロッパ音楽留学の学びを得る
私のレッスンでは、奏法のリフォームを進めつつ、その土台の上にヨーロッパ現地でしか学べない譜読み、解釈を加え、海外でも確実に評価される演奏をcostruire(構築)していきます。
人により条件が異なり、手が小さくて演奏で苦労している、音が硬い、腱鞘炎になる、どう表現したらいいかわからない、色々な悩みがあると思います。そして、急に海外に留学をしてしまった方は、色々なことが根本的に違うので、戸惑うことになります。
まずは、海外と日本の違いを理解し、海外のスタンダード、基本を学ぶこと、そして演奏と音色の土台になる体の使い方を覚えることで、時間を無駄にすることなく、充実した留学にすることができます。留学をしなくても、日本での演奏で、他者との違い、音色や表現力という武器を持つことができます。指導方法や目指すところもより明確になります。
ピアノの音色そのものを美しくするには
音色の良し悪しを決めるのは、手首の使い方です。脱力や固定を使い分けることがまず大事です。
脱力ができていないと、音が飛ばず、硬く詰まった音になります。そして、楽曲に応じた適切な音色を奏でるための、さまざまな身体操作法があります。
イタリアで自分の体にあった奏法を見つける必要があった私がたどり着いたのは、ピアノ脱力法メソッド®というものでした。これは日本人が構築したメソッドではありますが、イタリアでも当たり前のようになされている奏法をさらに体系的に、わかりやすくまとめてあります。かつてのウィーンの大学教授も同じようなメソッドで教えており、これは非常に理にかなった海外で通用するものであると同時に、日本人の身体にフィットした奏法である、ということがわかりました。
私はピアノ脱力法メソッド®の公認トレーナーの資格を取得しましたが、日本にいながら、国際基準の奏法へのリフォームをしたい方にはとても適した学びを得てもらえるのではないかと思います。
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