床での脱力トレーニングとは?
ピアノ脱力法メソッド®ベーシック講座の区分1「床での脱力トレーニング」では、オリンピックに出場するようなアスリート選手たちも実践している、荒井皆子氏考案の「バルーンメソッド」を導入し、ピアノを弾くための土台作りとしての脱力トレーニングを、ヨガのようにして行います。
始めに下半身の脱力トレーニング、股関節と肩甲骨の連動を行い、体内の各バルーンを内観して動かすイメージ力を伴ったトレーニングを経て、体の脱力と支えを両立し、最後は本番前の呼吸法を習得します。
今回は、床での脱力トレーニングから得られるベネフィットを5つご紹介します。
脱力トレーニング 床 5つのベネフィット
ベストコンディション維持
まず1つ目は、次の日に練習の疲れを持ち越すことがなくなります。演奏前はもちろん、演奏後の疲れた身体のクールダウンにも実践することができるため、自分自身で身体のコンディションをベストな状態に保つことができます。
腕だけでなく上半身を連動させた演奏をマスターできる
2つ目は、腕だけでなく上半身から使った演奏が可能になります。
曲の難易度が上がってくると、広い音域での跳躍なども多くなってきます。その時に、指、または腕だけで演奏していて、上半身や下半身が連動していないと、無理な姿勢になってしまったり、瞬間的な跳躍の際に腕の筋を痛めてしまうなどの事故にもつながります。
身体の内部のバルーンのイメージがあれば、それがクッションのような役割を果たしてくれるので、それらを未然に防ぐことができます。

ペダルを踏むときの力が抜ける
次に起こることとして、「ペダルを踏む足に力が入る」ということです。
足に力が入る原因としては、下半身の脱力ができていない、足首・膝・股関節の連動をうまく使えていないことが考えられます。ピアノを習い始めた子どもが、足全体を持ち上げてペダルを踏んでしまうのもこれが原因です。
体は下半身が土台なので、足の力が抜ければ安定して演奏することが可能になります。

肩こりや首こりが改善し、集中力が増し、表情豊かになれる
ピアノを弾いていてけっこう多いのが、肩や首が凝るということではないでしょうか。
これは、肩関節や肩甲骨が演奏中に連動していない、また上半身の支えがなく、無理な姿勢で弾いていることが原因です。床での脱力トレーニングでは、下半身から肩甲骨の連動を重点的に行い、ストレッチで伸ばすのではなく緩めていきます。
その結果、肩こりや首コリを未然に防ぐことも可能になります。たかが肩こりではない、というのが心理学の神経を調整する方法を知る友人です。彼は肩こりや首こりはその人の神経的な状態を反映していることが多いと言います。
無理な状態で弾く、がむしゃらに練習する、など交感神経が活性化した状態(戦うか逃げるかの二者択一)では、ガチガチに自分を固めて守ろうとしますし、頑張りすぎてしまい、そのうち崩れるように疲れを感じてしまう。肩や首の凝りが出る時というのは、頸椎に歪みを生じていることが多く、他者と社会的に交流する能力が低下するそうです。
それは、演奏を通した自己表現や他者との感性的交流をするにおいてハンデを背負った状態になります。演奏前の緊張で失敗することや、いつもよりうまく弾けないということは、普段の神経の状態によるところも大きいのです。
せっかくなら、ピアノを弾く時間というものを、心が落ち着いて、他者と楽しく交流できる、そういう神経が落ち着いた状態が活性化する時間にしたいですね。
本番前に身体と心の両面を整えることができるようになる
さいごに、本番前に身体と心の両面を整えることができるようになります。
単なる深呼吸ではなく、体内のバルーンの意識をもって内観しながら行うので、演奏に必要な支えを保ったまま、脱力することができ、その呼吸法は、演奏中にも応用することができます。
本番直前の舞台裏などでおすすめです。