今回は、ピアノ奏法における「固定」の様々な種類をご紹介していきます。
ピアノ奏法で固定って、なに?と思われる方も多いかと思いますが、意外にも楽曲のレベルが上がってくると、避けては通れない道です。
ピアノ演奏における固定とは何か?
固定とは、文字通り、指や腕を固定する、脱力とは正反対のことを指します。
ショパンやリスト、ラフマニノフなど、難しい曲に挑戦していくうえで、様々なテクニックに直面することは多いかと思います。そして、その弾けない原因が、「まだ脱力ができてないから弾けないんだ」と思いがちですが、実はそれは、間違いなのです。
確かに脱力ができていないと弾けないものも多く、それが原因で腱鞘炎をはじめとしたさまざまな事故につながるのも事実です。
ピアノ奏法の初期では、まず脱力することにフォーカスしますが、それがある程度できるようになると、今度は脱力とは相反する「固定」を習得していきます。
脱力した状態というのは、こんにゃくのように柔らかい状態で、そのままでは指先が体重を支えられません。そのため、ベースを脱力したうえで、支えが必要な場所に「固定」を入れていきます。
建築でいうところの、「柱」のような役割です。どんな素晴らしい建築物も、正しい箇所に柱が入っていないと一瞬でもろくも崩れ去ります。
ピアノ演奏の固定の種類について
固定、といっても、様々な種類があり、どのような音色が欲しいか、作曲家別に使い分ける必要があります。
大きく3種類あり
- 落とす
- 突く
- 荷重(圧力をかける)
それぞれに、手首から、ひじから、肩甲骨から、上半身から、全身からと、体のどの部位から使うかで結果として音色はかわってきます。つまり、固定にも15種類があります。
1-1 落とす×手首から
手首から先だけを固定します。シューベルト「魔王」のような、俊敏な和音連打の際に必須なテクニックです。テンポが速いので、いちいち脱力して抜いている暇はありません。
1-2 落とす×ひじから
プロコフィエフ「ピアノソナタ第3番」冒頭などで使われます。固定した硬い音色でありながら、落とすほどの重量はなく、軽やかな動きが実現できます。
1-3 落とす×肩甲骨から
ブラームス「6つの小品op.118」第3曲「バラード」冒頭などで使用されるテクニックです。固定して落とすけれども、そこまで重量は必要ないときに使用します。重さがまだ少ないので、ある程度俊敏に動くことができます。
1-4 落とす×上半身から
ショパン「バラード第4番」196小節目などで使われます。しっかり重さはかかるけれどまだ頂点ではないときなどに有効です。
1-5 落とす×全身から
身体全身の体重を指先にかけて、最大級の音量を発揮します。ショパンのエチュード「革命」の最後の4つの和音などで有効です。
2-1 突く×手首から
バッハやスカルラッティなど、バロック時代の基本的な奏法でよく使われます。硬い音色ですが、きわめて軽やかな音色を作ることができます。
2-2 突く×ひじから
ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」第3楽章冒頭のような、右手と左手で交互に連打する際に使用します。固定できていないと、テンポがぶれてしまいます。
2-3 突く×肩甲骨から
プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」第1楽章全体でよく用いられるテクニックです。落とすと違って、最終的なアクションが上に上がるので、硬い音色でありより華やかになります。
2-4 突く×上半身から
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」第1楽章展開部で全体的に用いられるテクニックです。打鍵した反動で上半身が押し返されるような動きになるのが特徴です。
2-5 突く×全身から
チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章冒頭のような、最大限のフォルテでオーケストラを超える華やかさが求められる場合によく用いられます。うまく自分の体重をピアノにかけることができれば、大編成のオーケストラがバックにいてもピアノの音がかき消されることはありません。
3 荷重(圧力をかける)
こちらは手首の柔軟性も同時に求められるため、フォルテだが柔らかく重厚な音色が求められる時に使用されます。最もわかりやすい例が、ベートーヴェン「ピアノソナタ第31番」第3楽章132-134小節です。ピアニッシモからフォルティッシモに向かって、手首から→ひじから→肩甲骨から→上半身から→全身からと一音一音進むごとにかかる荷重を変えていきます。
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