日本の音大からイタリアの音楽院へ

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初めてのイタリア

高校生くらいのころから、海外へのあこがれや、留学してみたいという気持ちは、なんとなく持っていました。しかし、大学入試もギリギリで合格、大学3年生までの成績も良くて学年の真ん中くらいで、まさか本当に留学できるなんて思ってもいませんでした。

大学3年生の2月、私の出身大学、昭和音楽大学では、北イタリアのヴェネト州で行われる研修がありました。すべての学生が参加するわけではなく、声楽、ピアノ、弦楽器の一部の学生です。現地のイタリア人講師から、ピアノのレッスン3回、室内楽のレッスン2回、最後にイタリア人の聴衆に向けての演奏会があり、約3週間ほどのプログラムです。

(この時ピアノ・室内楽のレッスンでお世話になった先生方は、どちらもローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミア出身の優秀な先生でしたが、この時は何も知りませんでした)。

これが、私が初めてイタリアを訪れた瞬間でした。

レッスンの合間に近くの町、バッサーノやヴェローナなどを散策することもできました。2月のとても風が冷たい季節でしたが、イタリアの、小さいけれどとてもかわいらしい街並みや、その場で感じる初めての空気感に、「ここ、住んでみたいな」と、直感的に居心地の良さを感じることができました。

イタリア研修でのレッスンをきっかけに・・

実技のレッスンは当然ですが、言葉がわからないので、イタリアに留学している昭和音大の先輩が、通訳として来ていました。自由時間に先輩たちを捕まえて、留学生活のリアルや留学に至った経緯など、いろいろなことを質問できたのは、もし自分が留学したらというイメージをとても鮮明にしてくれる、とても大きなことでした。

ピアノのレッスンは、90分が3回あり、その時の大学の実技試験の曲を持っていきましたが、けっこう丁寧に見ていただくことができました。やはり現地の先生から、現地の言葉で、現地の空気感でしか学べないこともあるもので、もちろん通訳を通してではあるものの、音楽の理解や楽譜の向こう側に見える世界観など、ためになることがたくさんありました。

室内楽のレッスンではピアノトリオを組み、現地のヴァイオリニスト、チェリストと一緒にレッスンとコンサートまで一緒に演奏します。そのような経験は、いざ留学を始めたらどうなるか、そのぼんやりとしていたイメージを鮮明に想起させてくれる、図らずもとても大きな体験となりました。

大学のカリキュラムとして用意しているのは昭和音大くらいだと思うので、改めて大変ありがたい体験をさせていただいたと思います。

約1か月をイタリアで過ごし、3月、日本に帰国し大学4年生となりました。

私の身に何が起こったのか知りませんが、それまで良くて学年の真ん中だった私のピアノの成績は、4年の前期試験で学年1位、秋に学内で推薦されコンチェルトのソリストを務め、卒業試験では学年2位になりました。

そのため卒業直後は、読売新人演奏会をはじめとしたさまざまな新人演奏会に大学代表として推薦をいただきました。そのころ大学の先生方から言われたのは、「まぐれで1位を取ることはあっても、1位→2位をキープしたのはまぐれでなく実力だから、留学すれば?」というものでした。

それで、イタリアでお世話になった先生にメールをし、留学したい旨を伝えたら、「そしたら、うちの学校の入試受けてみる?」と。それで、チェゼーナ音楽院を受験してみることになったのです。

講習会で現地の大学の先生を知るということは、留学のために最も大事なことの一つです。日本の音大の講習会や海外旅行や短期滞在で講習会に参加したり、プライベートレッスンを受けて現地の先生を知ることは、留学の第一のステップとして欠かすことができません。

いざ留学してみると

そんな感じで、大学卒業間近、ギリギリでイタリアに留学する流れになったので、語学の準備もなく、みなさんお察しの通り、大変な目に遭うことになります。

入試の話は以下の記事で

まず大変だったのは、「日本の音大で取った単位が、すべて替えがきかない」ということでした。

私が留学を始めた2011年ごろは、イタリアの音楽院全体でカリキュラムが見直され、新システムと旧システムが両方動いている状態でした。

それまでの、Vecchio ordinamentoと呼ばれるシステムでは、イタリアの音楽院で取得した学位がほかの国では認められず、イタリア国外へ出たときにすべてやり直しになることが問題になっていました。

そのため、現在のTriennio, Biennioというシステムが新しく始まり、ちょうど私は始まったタイミングで入学をしたのです。すると、先輩は日本の音大の単位が認められたのに、自分は認められないということが起こりました。仕方がないので、イタリア人と同じように全科目を履修し、合格し、意地で単位を取得しました。

音楽史も、音楽理論も、対位法も、すべてです。それはそれは修羅の道でした。

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